<タリバンの復権と民主主義>
小沢一郎議員を支援する会
代表世話人 伊 東 章
1、20年越しの米軍によるアフガン戦争が終りを告げようとしている。
アルカイーダによるとされている2001年の同時多発テロを口実にして米英軍がアフガンに対する空爆を始め、その後米軍の特殊部隊によってウサマ・ビン・ラーディンを暗殺した上で傀儡政権を樹立した。
しかし、その後もアメリカの傀儡政権に対するタリバン等愛国勢力の抵抗は続けられ、遂に20年ぶりにタリバン勢力が祖国を開放することになった。
その背景には、大統領選でバイデンに破れたトランプによるアフガンからの米軍撤退宣言と、それを受け継いだバイデン大統領による撤兵宣言が影響しているとも言える。
しかし、煎じつめれば、20年間にわたり200兆円以上の軍事出費をし、かつ2000人以上の米軍兵の戦死という代償を払っても、アフガン人民の占領はできなかった、ということである。
2、それにしても、2001年のアフガン戦争にしろ、それに次ぐ2003年のイラク戦争にしろ、この戦争は一体何だったのか。
アメリカ本土に対する他国の2回目の武力攻撃(もちろん1回目はわが国による真珠湾攻撃である)の元凶がアルカイーダ率いるビン・ラーディンである、とのシナリオ下で、テロの芽を摘もうというのがアフガン戦争であった(であろう)が、同時に、アメリカの覇権主義に敵対し、テロリストを養成しているとみなされた、サダム・フセインのイラクを叩き潰そうというのがイラク戦争であった。
主として米英は、その圧倒的な軍事力によって、それ迄まかりなりにも国家としての安定感を有していたアフガン、イラクの2ヶ国の旧体制を崩壊させたものの、両国を英米型の民主国家に変えることには完全に失敗したし、それよりも国内を安定させることにも成功しなかった。
3、では一体、米英は世界的な世論を排してまで、何のためにアフガン、イラク戦争を敢えてしたのであろう。
一つは、当時のブッシュ大統領が、同時多発テロによって落とされたアメリカの威信をとり戻すために大々的なアフガン、イラク攻撃を行なった、ということがあるだろう。
しかし、同時に、アメリカとしては、中東の石油利権を独占する、という狙いもあっただろう。
そして、更に大きいのは、戦争による経済の活性化という側面もあることだ。
米国は、20年間で約200兆円の軍事費をアフガンに投入したという。
しかし、このような膨大な国家予算の投下の裏では、軍需産業による巨大な博利が行なわれているのである。
殆どの戦争の目的は、政治的な大義名分よりも、こうした軍産複合体による戦争経済による巨額な博利であることは、資本主義経済化での戦争において例外はない。
つまり、こうしたアメリカを初めとする、いわゆる先進国と言われている旧帝国主義列強の草刈り場として、常に後進国、弱小国が犠牲にさらされているのである。
4、タリバン勢力が20年ぶりにアフガンの政治権力を回復したことを受け、西側(日本も含めて)諸国は、一斉に「又、アフガンではブルカをかぶることが強制され女性の権利は抑圧されることになる」などと不安を煽るような論調で一致している。
しかし、そんなことは大きなお世話だ、と言いたい。
特に、日本のメディアは、自国の人権侵害については目をつむり、専ら、外国(主として日本が快く思わない、中国、北朝鮮、韓国、ロシアなど)の人権問題を声高に論評する。
あなた方が偉そうに外国の人権問題を論評する程、日本の人権意識が十分であると言えるのだろうか。
それぞれの国には、それぞれに古くからの歴史、伝統、しきたり、文化があり、それに従って国の政治、社会の有り方が出来上っているのである。
それを無視して、たかだか200年前に建国されたアメリカの民主主義で世界を統治しよう、などという発想自体がおこがましい(もっとも、日本は、僅か70数年の間にアメリカの「民主主義」によって染め上げられてしまったが)。
資本主義経済が全世界を覆い尽すようになって、資本主義的価値観が世界に万延するようになったが、だからと言って、すべての国が、アメリカやイギリスの価値観をすべて受け入れるとは限らないのである。
その意味では、アメリカが中東において、どんなに軍事力と経済力を投下しても、中東の国すべてがアメリカ化することはない。
要するに、民主主義の輸出も輸入もできないのである。
今や、世界的なコロナ禍の中で、従来の社会のあり方が、すべての領域で見直されるべき時が来ている。
誰もが十分に働けて豊かで安心な生活ができない社会が、アフガンやイラクより優れているなどとは言えないであろう。
ましてや、コロナ禍で毎日1万人の人間が罹患し、毎日何十人もの国民が死亡しているのに、これに対応する医療体制も不十分な国の現状を無視して、オリンピック、パラリンピックなど全く無駄なことに大金を費やしている場合ではあるまい。
そろそろ日本も、アメリカの支配から脱却して日本独自の文化に根ざした民主主義国家を打ち樹てるべきである。
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